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『VIRTUAL RESONANCE』


公式化される宇宙、理論と実験によって証明されていく生命の仕組み、今も探査機は、新たな事実を求めて星々を梯子する。科学によって日々解き明かされていく宇宙の姿は、私たちに驚きや感動さえもたらしてくれる。ある面でそれは、私たちと宇宙との距離を近いものにしてくれたといえよう。しかしながら、別の面で は、月の裏側からライトが当てられ、立体感のない、ペラペラのお月様を見るようなココロ持ちにさせられはしないだろうか?お星様たちが、まるで科学に貢献させられているようなサッカクさえしないでもない!そういった折、人と宇宙との関係に橋渡しをしてくれるような、そんな響きが、『VIRTUAL RESONANCE』からは聞こえて来た。

...遠い遥か彼方への呼びかけ、…それに応じるように返ってくる反響。普段には感知できない音の波が、幾千幾百億の時間と空間を越え、私たちの耳もとへ届こうとしている。それは、三半規管を通って、海馬に到達し、見果てぬ夢を呼び覚まそうとするかのようだ。それにより平衡感覚は崩れ去り、いつしかカラダは 無重力空間を漂っている。そこで目にする光景は、人類が誕生するよりずっと前、銀河さえも忘れてしまっていた宇宙誕生の出来事である。夢のまた夢の時間を経験してきた宇宙の記憶が、沈黙を破ろうとしている。私は私でなく、未形成の宇宙と溶け合うかのように、判然としない世界を浮遊する。やがて、宇宙の素となる物質が 、破壊と創造を繰り返しながら結合し、各々のヴァリエーションを奏ではじめる。空間を一つの活動体が遊泳する。それはメロディーとなる、あるモノは共鳴し、またあるモノはそれに反発する。それらは、空間の中で、たちまち一大オーケストラを形づくり、宇宙は響きあう巨大なホールへと様変わりする。星たちは互いに交信し あっているかのように歌いあう。星自体には、知性や感性があり、意志を持って疎通しているかのようだ!鳴り渡る調べに身を委ねていると、限りない時間が、ほんの瞬く間に感じられる。そして先程まで宇宙を旅してきたという実感とともに、耳の奥でこだまする余韻が名残惜しい。聴き終わった後、ネオンに照らされた夜空に星 は見えなくとも、宇宙との距離がグッと縮まり、親しみがわいてくる。そこからは、新たに人と宇宙との交流が、始まることになるに違いないだろう。

このアルバムには、物そのものが持つ質感から、インスピレーションを得たかのような曲も収録されている。おそらくそれは、私たちが宇宙の破片であり、いかなる物質も、宇宙の起源をともにしていることと関係があるように思う。道端に転がっている石は、宇宙を漂流する隕石とそん色があるといえようか?蛇口から流 れ出る液体について、私たちは、どれほどのことを、知っているといえるのだろうか?身の周りにある物や現象は、不可思議で、未知との遭遇だと言えはしまいか?
そんな中で、物自体から採取し、変調された現実音は、その物の生命感を鮮やかに現出させる。加えて、その音色は澄んでいて、どこかしら、清らかな世界観が感じられる。また甘美でさえある。その物本来の美しさが、そこに表現されているようだ。それは、桃源郷への扉を開くかのようでもある。


宇宙へと込みあげる想いによって奏でられる音楽は、全体をとおして、懐かしいような気持ちがわき起こる。また、寂寥感も感じられ、私たちは遠く隔てられた宇宙の彼方に、私たちを抱きかかえてくれる揺り籠のような故郷を求めているのかもしれない。

太古より人々は、夜空に想いを馳せ、あまたの星々の運行に、人の運命が左右されると信じられてきた。信仰の的となった惑星には、祈りが捧げられ、儀式には音楽や舞が奉納されてきた。そういった営みは、今の時代においては失われてしまったのだろうか?この作品は、その流れをも受け継ぐかのように、雅楽が取り入 れられ、電子音響という現代のサウンドとミックスされている。それはこの作品が、古来より脈々と息づく魂と、最新の宇宙論とを融合させ、独自の宇宙観を展開させていることにもつながるだろう。私たちの生活スタイルに合わせたかたちで、広くより多くの人が、家庭で気軽に宇宙旅行を楽しみ、宇宙について、人類について、 また、自分とは何かについて、彼方へとイメージを膨らませる。そんな機会を与えてくれる作品が生まれたことが、喜ばしく大きな一歩だといえるのではないだろうか。

藤浦光俊(美術家)

国立天文台内の四次元宇宙シアターの宇宙映像用音楽を“エレクトロニカ・ミックス”!とのことだが、サウンドだけでも磨き上げた鮮烈な響きの生々しい音像に惚れ惚れする。さらにDVDはシンプルかつ緻密な音がスペーシーな映像の立体感を高めている。紙質にもこだわった穴空きジャケも含めて→★
-雑誌CDジャーナル掲載の音楽ライターによるミニ・レビュー
コメントの最後に「★」がある作品は試聴した筆者のイチ押し作品です。

鮮やかに描き出された神秘な宇宙の姿に添えられた、深遠なサウンドスケイプ。
インナー・アンビエンスをテーマにしたレーベル=テ・ピトレコーズ主宰の宮木朝子による、再構築された立体宇宙映像のための音楽と、その映像とオリジナル音源を収録したDVDによる2枚組アルバム。
微細にざわめくノイズを鏤めた音像に、プロセスされたギターや声で繊細に綴る、叙情をも湛えた、澄んだ響きが幻想的にたゆたい、茫洋と広がるT-1、ゆったりと波打つような響きのなかに、その音を静かに木霊させるピアノが浮かび、ぼんやりと郷愁的なムードを形作るT-6、細やかに綴るピアノが織り重なり、切なくも美しい紋様を紡ぎ出すT-14に、柔らかに漂い流れる優美な響きに、憂いが翳りを添える、厳かな心地をもたらすT-15。
果てしなく広がる神秘的なサウンドに導かれ、マクロ・コスモスとミクロ・コスモスの深奥へと至る、透徹としたディープ・メディテーショナルなアンビエンス。トリップ感をもって繰り広げられる映像も圧倒的です! 
-small music 作品紹介より

三鷹市にある国立天文台4次元デジタル宇宙センターで流されている宇宙映像用のサウンドを、CDアルバム用にエディットし直した1枚!宇宙の最新の姿を見ることが出来る4次元デジタル宇宙センターの映像プログラム用に制作された音源は、雅楽と電子音響、エレクトロニカ、現代音楽らが交差した、宇宙レベルのアンビエント・サウンド!ナショナルジオグラフィック・ファン驚愕の映像DVD付!
-Beams Records Online shop 作品紹介より