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tepito-002 reminiscence  
Artist interview-1 2013-01-18
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Junya Oikawa 及川潤耶

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現在ドイツにあるカールスルーエ・メディア芸術センター「ZKM」を拠点として、国際的な芸術祭への参加や、委嘱作品発表など活発な創作活動を展開する及川潤耶氏。
このたび、音響映像詩、tepito-002 reminiscenceについてインタビューをおこないました。(今後映像の齋藤高晴氏へのインタビューも予定してます)

interview

Q1 音楽との出会い含めて、このアルバムに至るまでの以前の音楽制作、現在の活動などを聞かせてください。

A1  両親が音楽の教員である影響もあって、幼い頃からクラシックピアノを弾き、10代はロックバンド活動をしていました。そのあと、洗足音大で理論や美学を学び、録音とデジタルツールを使用したサウンドコンポジションを追求する様になります。卒業後は現代アートの作家との出会いがあり、彼らと共同で地元の街や日常生活に近い場所で活動した時期があって、reminiscenceはその時期に制作した作品です。そして、東京藝大の美術専攻の大学院で更にサウンド表現を深めていきました。2011年からはドイツで活動をしています。

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Q2  今回のアルバムは「架空の人物の記憶を綴った音響映像詩」ということですが、アルバムのコンセプト、制作のいきさつなどを聞かせてください。

A2  2005年頃からサウンドや他のメディア・テクノロジーを扱って、空間を感覚器官として機能させる表現方法を構想するようになりました。「reminiscence」はそのプロジェクトに属するもので、2007年に仙台のCafe Mozart Atelierで展示する為に、友人である斎藤高晴くんと共同制作したインスタレーション作品になります。
空間そのものを有機的な「生きた身体」と定義して、その記憶の感覚を各メディアによって制作することで、回想される物語の推移を、複合的な空間表現として展開しています。ですので、このアルバムはそのインスタレーション作品の、いわゆるカタログのようなものになりますが、その一連の物語の時間軸はそのまま収録されています。

Q3  作品のコンセプトのなかに複数の空間や記憶、といったキーワードがありますが、及川さんの音・音楽のなかでそれはどのように表現されているのか聞かせてください。

A3  この作品では複数の場面が物語の中で展開しています。それは、プロローグやエピソードの断片を想起させる旋律・ハーモニーを含んだ音楽的な音響場面や、旅をしているような風景の記憶を音響によって再現している場面などがあります。
これらは、そのサウンドメディアが展示空間に対して、(音楽的な)心象空間と、(音響風景による)現実空間、(抽象的な物音による)非現実空間を感覚する為の機能、いわば聴覚による器官を表現している事になります。例えば、映像が何らかの像を映し出していない状態に対して、音響風景が空間に再現される場面が作品にありますが、それは聴覚を介して視覚(現実空間)を想像する機能を、展示空間が持つ事になります。

Q4  及川さんの作品には録音された現実音(環境音、自身の声など)の精密な電子操作による加工や、時にはアコースティックのサウンド(ピアノ、ハープなど)も登場し、独特の有機的で透明な世界を形成しています。そうした「音源」と「作曲作業」についてこだわっている部分、聞き所などなどあれば聞かせてください。

A4  この作品に含まれるサウンドは5つの種類(楽音を含む音響、足音、声、抽象的な物音、音響風景)に分類されますが、それらは、先ほどお話した3つの空間の"移動性"を表現する為の機能を持っています。例えば足音は、或る空間に向かう身体の移動とその存在感を表し、言葉の意味を持たない"詩"は、ナレーションとして各場面を推移します。また、それぞれのサウンドは、視覚メディアとの有機的な構成によって、各空間の機能性を階層的な表象体験により深めています。
ですので、空間の移動性から形成されうる、立体的な意識の距離感覚(触覚性) が展開する現象を、一つの大きな物語、記憶、緩やかな感覚の旅として、体験してもらえたらと思います。

Q5  サウンドインスタレーションとして空間的な音響表現にも取り組んでいるとのことですが、この作品を上演するときの理想的な形態などあれば聞かせてください。

A5  この作品はカフェモーツァルトの空間の為に作られたので、そこで展示を行うのがベストですが、例えば、教会や大きな廃墟など、作品とその場に対して新しい相互作用が生まれるような、特殊な場所での展示も興味深いですね。発表空間には複数のスピーカーを配置し、上演時間を指定する展示の形態が好ましいです。ホール等で発表する形態も考えられますが、その際は、アクースモニウム奏者はなるべくバックヤードに配置し、作品の一部にならない様にします。それは、この作品の持つコンセプトと各メディアとの関係性を明確にしつつ、空間にたち起こる現象を表現する事を目的としています。

Q6  現在の活動、今後の活動予定、製作予定、抱負などを聞かせてください。

A6  ドイツの北地方に"worpswede"という、リルケの詩でも有名な、自然環境に恵まれた地域がありまして、そこで2ヶ月間滞在制作と展示を行います。今後も、ある土地や環境に対して、これまでより更にアプローチを深め、自分の録音声を扱った展示や、それと並行して電子音響のコンサートを行おうと考えています。ゆっくり時間をかけて自分の本質的なサウンド表現を追求していきたいですね。

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sound body project : i sing with.. (photo:Io Nishimura)

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